口腔内の写真を撮るときに できれば あらかじめ その目的をはっきりしておくのがいいでしょう。学会、研究会などで一コマずつ映写するのであれば 各コマにはできるだけ余分なものが入り込まないように撮影します。しかし何枚かの写真をあとで合成して一画面にするのであれば撮影時にできるだけ 倍率(縮小率)を揃えるのがいいでしょう。この場合余分な部分はトリミングして使います。
スライド映写用の撮影
できるだけ余分なものが入らないように撮影。(このフィルムはコダクロームです。)
あとで組み合わせて一枚として使う場合。
あらかじめ合成することを前提とした撮影では余分なものが入っても構いません。できるだけ倍率を揃えて撮影します。
得られた画像
まず角度と裏表を修正
撮影後 ミラーを使って撮ったものは裏表をなおし、曲がって撮れてしまったものは角度を修正します。
表裏、角度を修正後 自分なりの決まりにしたがって合成し、必要事項を書き込みコンピューターのハードディスクに保存します。 ここで使用しているソフトはフォトショップです。のちほど この写真を撮ったときの状況をご説明いたします。
人手がなくても 3-4歳を過ぎていれば 自分で口角鉤を持ってもらい 撮影できます。この子は休診日に歯痛で来院されました。
私の趣味のカメラのページで 口腔内写真の撮影法について書こうとは思ってもいませんでしたが ご質問がありましたので 少しだけ触れます。ご興味のない方は 飛ばしてください。
はじめに カメラとレンズの選び方から述べます。
小児歯科医院を開業する前に勤めていた歯科医院で口腔内撮影用のカメラ、レンズ、フィルムをテストしたことがあります。
そのときの使用機材は OM2N 50mmマクロ、OM2N パナゴール オートマクロ90mm、ペンタックス スーパーA デンタルマクロ100mm、ニコンF2 メディカルニッコール120mm、ニコンF2メディカルニッコール200mm、ヤシカデンタルアイ55mm、ヤシカFR メディカル100オーラルの7本のレンズで、 フィルムはコダクローム25、コダクローム64、エクタクローム64、フジクローム100、フジクローム100プロフェッショナル、サクラクローム100、コダカラー100です。ポジフィルムで撮ったものを2台のプロジェクターで投影し、あるいは ポジからプリントを作り模造紙に貼り7(?)人の歯科医、歯科技工士で比較検討しました。
これが そのときのプリントです。1984年3月30日と日付の入ったプリントが見られます。
接写用レンズには簡単に分けますと①50mm前後のもの、②100mm前後のもの、③200mm前後のものの3通りあります。
つぎの写真は①②③で正面から撮ったものを比較のために並べたものです。③が一番自然に撮れているのがわかります。ただし③はワーキングディスタンスが大きく、またメディカルニッコール200mmの操作性(倍率を変えるたびにアタッチメントレンズを換えたり絞りを変えたりしなくてはなりません)が悪いという欠点があります。①は遠近感が強調されていて写りが不自然です。側方の歯がよく見えません。それで②のレンズが良いととなり、 操作性などを考慮すると120mmメディカルニッコールが一番よいとなりました。
左上のOはオリンパスOM2N、NはニコンF2、右上の数字はレンズの焦点距離を表し、50は50mmレンズ、90は90mmレンズ、200は200mmレンズ、右下の文字はフィルムの種類で、KRはコダクローム64、ERはエクタクローム64、RDはフジクローム100を表し、絞りは16(200mmのKR、ERのみ11と16の中間の絞り値)です。
もう少し拡大して比較してみます。フィルムはすべてフジクローム100です。
レンズの焦点距離による見え方の違い
50mm
200mm
レンズの焦点距離による見え方の違い
50mm
100mm
レンズの焦点距離による見え方の違い
100mm
200mm
20年ほど前の時点では、メディカルニッコール120mmとエクタクロームの組み合わせがよい ということになりました。
これらの写真の整理の方法ですが、せっかく撮った写真をいつでも必要なときに使えなくては意味がありません。
写真のノートが必要です。カルテにもフィルムの番号を記載します。
撮影メモ
スライドの時には、はじめの頃は 専用キャビネットに患者さんごとのファイルを作り50音順に保管していました。しかし 増えてくるとこの方法では対処しきれなくなります。ポジフィルムによる記録を特別なもの以外やめ、ネガに切り替えました。ポジフィルムはマウントに必要事項を記入し、現像からあがってきたときに入ってくるプラスチックの箱に入れ市販の文庫用本棚の棚板を増やしたものに入れています。
以前のスライドの保管
現在のスライドの保管
また あるときターミナルディジットという整理法を知りました。この方法でカルテの整理を始めましたがネガの入っているカバーにも色別のシールを貼ってこちらは番号順にプラスチックの引き出しに入れて保管しています。
ネガケースに数字に対応したカラーシールを貼ってある
必要なネガが収められている引出しを開けると貼ってある色別のシールによって すぐに取り出せます。2004年2月4日現在19806になっています。これを初めのようなスライドで スライド専用キャビネットに収納していたらと思うとぞっとします。このネガの保管方法では患者さんのカルテに記載されているフィルム番号を見ればすぐにネガを取り出すことができます。必要ならフィルムスキャナーでパソコンに取り込み加工することもできます。
35mmフィルムを使うカメラでは 焦点距離が100mm位が使いやすいtと書きましたが、デジタルカメラでは記録するCCDなどの大きさによって画角が変化しますので、普通35mmカメラで何mm相当と断り書きがあります。50mm標準レンズの画角が43度でしたら100mmレンズでは21.5度ですから、デジタルカメラで口腔内撮影用に使うのでしたら、何mmのレンズという決め方でなく画角が20度位のレンズとしてもよいでしょう。
下の写真は 私が使っている Sony DSC-D700の10mm(左)と26mm(右)で撮ったときの口腔内写真です。35mmのフィルムカメラの50mmと100mmのときほど極端ではないことがわかります。私は 通常このカメラの15mm~26mmの焦点距離の範囲で撮影しています。
つぎに 実際の撮影時の写真を示します。例はデジタルカメラですが電源を一体化したメディカルニッコールの場合でもほぼ同様です。写真はさきほど 「組み合わせて 一枚として使う場合」 で ご説明したときのものです。
正面
真横
右側面
左側面
上顎
下顎
得られた画像
まずは角度と裏表を修正
合成
1列目の状態で撮影し、2列目の画像を得、角度、裏表を修正して3列目の画像として最終的に右下のように合成します。
合成して撮影日、年齢、整理番号を記入
つぎに デジタルカメラでの記録がいかに簡単かを示します。
2001年の夏のことです。歯科大学を卒業されて2年目のT先生が、小児歯科の診療を見たいと言ってこられました。一週間に二日、6ヵ月間いらっしゃることになり、せっかくみえるのでしたら口腔内の写真を撮られてはいかがですか と お聞きしたところ やってみよう となりました。機材は私と同じものを一組用意いたしました。
つぎの写真が初めて撮られたものです。
初めての口腔内写真
デジカメでは撮りなおしができる
初めての口腔内写真
このように して撮られました。
左下の写真は T先生が写真を撮り始めてから17日目に 撮られたものです。右下の写真は同じときに20年以上こういった写真を撮り続けている私が撮ったものです。それほど差は認められません。
写真を撮り始めて17日目の写真です
同じ日に私が撮った写真です
ごく一般的なコンパクト・デジカメで口腔内の写真をお撮りになりたいと思われる方もいらっしゃると思います。
昨年の4月から8月まで、9月に開業される先生のところで 常勤で働きだすまでの5ヶ月間 私のところで小児歯科の診療を手伝ってくださったS先生にも 口腔内の写真を撮ることを勧めました。ご自分でオリンパスのコンパクト・デジカメをお持ちだということを聞き、このカメラで撮る工夫をいたしました。用意したのは3mm厚のプラバンとクロースアップレンズ、ニコンのリング状にLEDが並んでいる接写用ライト(MACRO COOL-LIGHT SL-1)です。まずプラバンにクロースアップレンズをつけるための穴を開けます。(東急ハンズで開けてもらいました。)カメラのレンズの光軸がプラバンの穴の中心になるように高さを合わせて直角に曲げます。プラバンの穴にクロースアップレンズをはめ込み、この穴の周りにLEDライトをねじ止めし、カメラの三脚穴を使って固定します。次のような写真を撮られました。
後ほど ここに そのときの 写真を載せる予定です。
しばらくしてから 私と同じ組み合わせのセットを使って練習をしていただきました。
ここに その写真を 載せる予定です。
昔は大変でした。
1981.4.15
81.4.15
81.6.22
81.10.5
83.7.2
83.7.25
83.11.30
84.2.8
84.3.7
84.4.6
84.5.7
84.6.5
84.8.27
84.9.27
85.1.7
85.2.6
85.3.6
85.4.3
85.7.27
85.10.14
85.12.29
86.3.29
86.7.12
86.11.22
87.3.7
87.6.15
88.1.23
88.6.20
88.7.2
89.4.1
90.3.27
91.4.6
92.4.24
93.4.1
という具合です。10年以上前のことですが 虫歯だらけだった子が永久歯が生え揃ったときに 5本も詰めることになってしまったとはいえ 当時は 満足していました。今は もちろん 一本も詰め物がないように頑張っています。
歯科医で口腔内の写真を撮られている、あるいは一時撮っていた方は多いと考えています。ただ思っていたような結果が得られず やめてしまう方も多いようです。もし お手元に古いスライド(そのまま使うには 構図などの点で差し控えたくなるようなもので構いません)があれば ぜひ 次のようなことをされることをおすすめします。
24年ほど前のスライドです
7歳 1980.4.16
トリミングしてゴミと傷を除去しました
7歳 1980.4.16
フィルムスキャナーで取り込んで、角度の修正をしトリミングしました。
1年後
8歳 1981.5.25
さらに2年後
10歳 1983.7.26
その後の経過も取り込みました。
ファイルを見ていたら初診時のスライドがありました
3歳6ヶ月 1976年3月
初診時の指しゃぶりの状態もありました
3歳6ヶ月 1976.3
私が勤める前に 院長が初診時の写真を撮っていました。指しゃぶりのために前歯に隙間が開いています。また上顎が狭くなっているのもわかります。
先ほどの写真も指しゃぶりの実例として利用できます
1
3歳
2
7歳
3
8歳
4
10歳
3歳過ぎまで 指しゃぶりの癖があると 永久歯が生えてきたときに問題となることがある という 説明用のプリントができました。
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もっと 具体的に どのような写真を撮っているか ご興味のおありの方は 私の 「仕事のホームページ」を ご覧いただきたいと思います。ご質問も そちらの メールアドレスに いただければ 幸いです。